治療について/SIADHの治療

血清ナトリウム濃度120mEq/L以下で中枢神経症状を伴う場合

SIADHの重症度は、血清ナトリウム濃度低下の程度やその持続時間、低ナトリウム血症による中枢神経症状によって判断されます。血清ナトリウム濃度が120mEq/L以下でけいれんや昏睡などの中枢神経症状を伴うなど速やかな治療を要する場合は、3%食塩水(高張食塩水)の点滴投与を行い、フロセミドの静脈注射も適宜併用します。

さらに詳しく低ナトリウム血症の症状

3%食塩水(高張食塩水)の点滴投与

3%食塩水を0.5〜1mL/kg/時の速度を目安に点滴投与します。浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome:ODS)を防ぐために、血清ナトリウム濃度を1〜2時間ごとに測定し、血清ナトリウム濃度の上昇は24時間で10mEq/L以下、48時間で18mEq/L以下になるようにします。より正確な予測はAdrogue-Madiasの予測式から求めます1,2)

さらに詳しく浸透圧性脱髄症候群(ODS)

血清ナトリウム濃度の補正速度は、低ナトリウム血症が急性に生じたか、あるいは慢性にゆっくりと生じたかによって異なります。慢性の低ナトリウム血症では、脳細胞が浸透圧物質を細胞外に排出して細胞内を低張に保つ防御機構が働いています。この状態で急激に血清ナトリウム濃度を補正しようとすると、脳細胞から水が流出してODSが生じる恐れがあるため、上記の補正速度を参考に緩徐に補正を行っていきます。

一方、48時間以内に急激に血清ナトリウム濃度が低下した急性の低ナトリウム血症では、脳細胞の防御機構がまだ働いていないため、ODSのリスクが低いと考えられます。そのため、中枢神経症状を伴う急性の低ナトリウム血症では、血清ナトリウム濃度1〜2mEq/L/時の上昇を目指して積極的に補正を行います。低ナトリウム血症に至った経過が不明の場合は、慢性低ナトリウム血症として扱い、緩徐に補正を行っていきます。

血清ナトリウム濃度が120mEq/Lに達するか、低ナトリウム血症に伴う神経症状が改善した時点で3%食塩水の点滴を中止し、水分制限による治療に変更します。

さらに詳しく血清ナトリウム濃度の補正速度と測定基準

  1. 1)Adrogué H.J. and Madias N.E.: N Engl J Med, 342(21):1581-1589, 2000.
  2. 2)柴垣有吾 日腎会誌50(2): 76-83, 2008

有馬 寛 日内会誌103(4): 849-854,2014
山口秀樹, 中里雅光 日内会誌105(4): 667-675, 2016
有馬 寛 今日の臨床サポートp1、p5
柴垣有吾 著 深川雅史 監修 体液電解質異常と輸液 改訂3版 中外医学社 2019 p58-66
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業「間脳下垂体機能障害に関する調査研究」班 編 日本内分泌学会雑誌 95(Suppl), 18-20, 2019

次のページ:経口バソプレシンV2受容体拮抗薬によるSIADHの治療