間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドラインにおけるSIADHの治療
「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」では、SIADHに対して、原疾患の治療、水分制限、塩分投与、3%食塩水(高張食塩水)の点滴投与、薬物治療といった治療法が示され(表1)、「いずれか(組み合わせも含む)の治療法を選択する」としています。なかでも、水分制限はSIADHの治療の基本となります。SIADHの原疾患が明らかな場合は、原疾患の治療を行います。血清ナトリウム濃度120mEq/L以下で中枢神経系症状を伴うなど、速やかな治療を必要とする急性期の場合は3%食塩水を点滴投与します。緩徐な治療が求められる慢性期の場合は、水分制限に加えて塩分投与を行います(図1)。
表1 SIADHの治療
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次のいずれか(組み合わせも含む)の治療法を選択する。
- 原疾患の治療を行う。
- 1日の総水分摂取量を体重1kg当り15〜20mLに制限する。
- 食塩を経口的に投与する[例:食塩9g/分3/日(成人の場合)]。
- 血清ナトリウム濃度が120mEq/L以下で中枢神経系症状を伴うなど速やかな治療を必要とする場合は、3%食塩水を点滴にて投与する。また、フロセミドの静脈内注射も適宜併用する。重篤な中枢神経症状がある場合は3%食塩水の急速投与も考慮する[例:3%食塩水100mL/10分(成人の場合)]。いずれの場合も、浸透圧性脱髄症候群の出現を防止するために血清ナトリウム濃度を頻回に測定し、血清ナトリウム濃度上昇を24時間で10mEq/L以下、48時間では18mEq/L以下とする。
また、血清ナトリウム濃度が120mEq/Lに達するか、低ナトリウム血症に伴う神経症状(意識障害)が改善した時点で3%食塩水の投与は中止する。補正前の血清ナトリウム濃度が110mEq/Lを下回る低ナトリウム血症、あるいは低カリウム血症、低栄養、アルコール中毒、肝障害などの危険因子を伴う場合は、より緩やかに血清ナトリウム濃度を補正する。
- 血清ナトリウム濃度の上昇が、24時間で10mEq/L、48時間で18mEq/Lを超えた場合は、3%食塩水の投与を速やかに中止する。また、5%ブドウ糖液の投与等によって血清ナトリウム濃度を再度低下させることを検討する。
- 水分制限を施行しても改善を認めない場合には、入院下でバソプレシンV2受容体拮抗薬トルバプタン(3.75mgまたは7.5mg)を1日1回朝食後に経口投与します。特に血清ナトリウム濃度が125mEq/l未満の場合や低カリウム血症、低栄養、アルコール中毒、肝障害など浸透圧性脱髄症候群の危険因子を伴う場合には、3.75mgからの開始が望ましいとされています。投与初日はトルバプタン投与前、4~6時間後、8~12時間後に、以降は投与1週間まで1日1回採血を行い、血清ナトリウム濃度の推移を観察します。トルバプタン開始後は水分制限を解除し、口喝にあわせた水分摂取を指示します。
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監修/有馬 寛. 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版. 日本内分泌学会雑誌;2023. P21-23.(一部抜粋)
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監修/有馬 寛. 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版. 日本内分泌学会雑誌;2023. P21-23.
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