低ナトリウム血症とは

水バランス調節系

水バランスは水の摂取量と排泄量のバランスですが、前者は口渇感、後者は抗利尿ホルモン(ADH)であるバソプレシン(AVP)によって調整されています。
ADHは、視床下部で産生され、脳下垂体後葉から分泌されます。ADHの分泌は、主に①浸透圧調節系、②容量・血圧調節系によって調節されますが、③神経伝達物質や一部の薬剤によっても影響されます。また、④嘔気や低血糖、低酸素状態などによっても左右されます。

① 浸透圧調節系

血漿浸透圧の変化は、第3脳室前腹側部の終板脈管器官や脳弓下期間などに存在する浸透圧受容体を介して感知され、視床下部に情報が送られて、ADHの産生と分泌が調整されます。浸透圧受容体によるADHの分泌調整は、浸透圧が浸透圧閾値と呼ばれる値を超えると分泌が促進され、それ以下になると分泌が抑制されます。浸透圧閾値はおよそ280mOsm/kgですが、個人差があります。

② 容量・血圧調節系

心房に存在する容量受容体や、頸動脈洞から大動脈弓に存在する圧受容体が血管壁の進展を感知しています。通常の循環血流量や血圧では、圧受容体が活性化されてADHの分泌は抑制されていますが、出血や脱水などにより血管壁の進展度が低下すると、抑制が解除され、ADH分泌が増加して体液貯留に傾きます。用量・血圧調節系によるADHの分泌亢進には、循環血流量または血圧変動が10%以上生じることが必要です。

③ その他の因子

内因性の因子として、プロスタグランジンやアセチルコリン、オピオイドペプチドなどの神経伝達物質や神経修飾物質がADHの分泌に影響します。また、外因性の因子としてクロフィブレート、ビンクリスチンなどの薬剤もADHの分泌に影響します。

④ その他の刺激

嘔気やストレス、低血糖、低酸素状態などがADH分泌を刺激します。なかでも嘔気は、延髄の嘔吐中枢を介してADH分泌を亢進しますが、①の浸透圧調節系や②の容量・血圧系よりも強力にADH分泌を促します。

井村裕夫ほか編: 最新内科学大系12 内分泌疾患1 間脳・下垂体疾患 p129-135
柴垣有吾 著 深川雅史 監修 体液電解質異常と輸液 改訂3版 中外医学社 2019 p3、p7、p42-44