SIADHの症状
SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)は、脱水兆候や浮腫を認めず、頭痛や悪心、意識障害、痙攣などの低ナトリウム血症の症状を呈します。ただし、低ナトリウム血症が緩徐に進行した場合は症状を自覚しないことも多くあります。また、低ナトリウム血症をきたす疾患や病態は多岐にわたるため、症状のみからSIADHを診断するのは難しいといえます。そのため、脱水や浮腫などの体液量の評価が重要であり、血液検査や尿検査値も合わせて診断していきます。
さらに詳しく低ナトリウム血症の症状
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https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=364(2023年9月現在)
柴垣有吾. 監修/深川雅史. 体液電解質異常と輸液 改訂3版. 中外医学社 ; 2019. P56.
SIADHの病態
SIADHは、低ナトリウム血症であるにもかかわらず、抗利尿ホルモンであるバソプレシン(AVP)による水の再吸収が持続し水利尿不全となっている病態です。本来、血清ナトリウム濃度が低下すると、AVPの分泌が抑制されることで水利尿が亢進して、血清ナトリウム濃度は回復します。しかし、SIADHでは血清ナトリウム濃度が低下してもAVPの分泌が抑制されないため、血清ナトリウム濃度は低下したままとなります(図1)。
AVPの分泌亢進により、SIADHでは一時的に循環血液量が増加した希釈性低ナトリウム血症や低血漿浸透圧を呈します。しかし、AVPの分泌亢進状態が長時間持続すると、AVPのV2受容体や、水チャンネルであるアクアポリン2のダウンレギュレーションが生じて部分的に水利尿が回復します。これはAVPエスケープ現象と呼ばれます。それと同時に、循環血液量増加により二次的にナトリウム利尿ペプチド(atrial/brain natriuretic peptide:ANP/BNP)の分泌亢進やレニン-アンジオテンシン-アルドステロン(renin-angiotensin-aldosterone:RAA)系が抑制されることによりナトリウム排泄も進み、循環血液量がほぼ正常の低ナトリウム血症(体液正常型低ナトリウム血症)となります(図2)。
監修/有馬 寛. 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版. 日本内分泌学会雑誌;2023. P21-23.
有馬寛 : 日内会誌. 2014;103(4) : 849-854.
編集/井村裕夫ほか. 最新内科学大系12 内分泌疾患1 間脳・下垂体疾患. 中山書店; 1993.
門川俊明 : 月刊薬事. 2017 ; 59(5) : 889-893.