低ナトリウム血症とは

ナトリウムの動態学

われわれの体の約60%は水分(体液)であり、そのうち約3分の2が細胞内液、3分の1が細胞外液です。細胞外液の約4分の1から3分の1は血管内、それ以外は細胞間質に存在します(図3)。この体液の恒常性を維持するため、体内ではさまざまな水電解質バランス維持機構が働いています。なかでも、水とナトリウムの代謝調節は体液の浸透圧と量の恒常性調節の要といえます。
体内のナトリウムバランスは、循環血漿量の変化に応じて主に4つの系で調節されています。

① レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(renin-angiotensin-aldosterone:RAA)系

ナトリウムやそれに伴う水の喪失により循環血漿量や血圧が低下すると、腎還流圧低下、交感神経賦活などを介して傍糸球体装置からのレニン分泌が亢進してRAA系が活性化します。RAA系の活性化により末梢血管収縮や腎臓でのナトリウム再吸収が亢進して尿中ナトリウム排泄が低下します。

② ナトリウム利尿ペプチド(atrial/brain natriuretic peptide:ANP/BNP)系

ナトリウム摂取やそれに伴う水排泄低下による循環血漿量増加は、容量負荷として心房・心室の伸展刺激となり、ナトリウム利尿ペプチド分泌が亢進します。ナトリウム利尿ペプチドは、腎臓の集合管でのナトリウム再吸収を抑制して尿中ナトリウム排泄を亢進させます。

③ 抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone:ADH)系

循環血漿量低下による頸動脈圧低下は、主に頸動脈洞に存在する容量・圧受容体によって感知され、交感神経系の刺激を介して視床下部からADHが分泌されます。この刺激は、RAA系の活性化と合わせて口渇感を刺激して飲水行動も起こします。

④ 物理的因子、尿細管糸球体フィードバック

腎臓のautoregulationを介した糸球体細動脈の収縮・拡張などのGFR維持機構により、近位尿細管でナトリウムバランスの調整が行われます。

図3 体液分布とその比率
体液分布とその比率

柴垣有吾, 体液の生理のキホンを知ろう!「輸液のキホン」日本医事新報社
https://www.jmedj.co.jp/premium/yueki/data/0001/ 2020年12月閲覧)

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柴垣有吾 著 深川雅史 監修 体液電解質異常と輸液 改訂3版 中外医学社 2019 p7〜21

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