血清ナトリウム濃度の補正速度と測定基準
血清ナトリウム濃度120mEq/L以下でけいれんや昏睡など中枢神経症状を伴うなど重症の低ナトリウム血症の治療では、高張食塩水の輸液やフロセミド投与などによる速やかな補正が必要です。ただし、急激な補正は浸透圧性脱髄症候群(ODS)を引き起こすことがあるため、補正速度には注意が必要です。
低ナトリウム血症の補正に関してはコンセンサスが得られていませんが、高張食塩水としては3%食塩水がよく用いられており、3%食塩水をおよそ0.5〜1mL/kg/時の速度を目安に点滴投与し、適宜フロセミドの静脈内注射も併用して水利尿を促します(図1)。血清ナトリウム濃度の測定は、点滴開始後は1時間ごと、傾向を把握した後は2〜4時間ごとに行います。
血清ナトリウム濃度120mEq/L到達、または、中枢神経症状の改善まで
- 3%食塩水をおよそ0.5〜1mL/kg/時の速度を目安に点滴投与します。下記「3%食塩水点滴投与による血清ナトリウム濃度の予測」を参考に点滴速度を調整します。
- 血清ナトリウム濃度の測定は、点滴開始後は1時間ごと、傾向を把握した後は2〜4時間ごとに行います。
- 血清ナトリウムの上昇は24時間で10mEq/L以下、48時間で18mEq/L以下になるようにします。
- 血清ナトリウム濃度の補正が過剰(24時間で10mEq/L、48時間で18mEq/Lを超える上昇)となった場合は、3%食塩水の点滴を中止し、5%ブドウ糖液に変更して血清ナトリウム濃度を再度低下させることを検討します。
- 補正前の血清ナトリウム濃度が110mEq/Lを下回る、あるいは低ナトリウム血症是正によるODSの危険因子を伴う場合は、より穏やか(24時間で8mEq/L未満)に血清ナトリウム濃度を補正します。
低ナトリウム血症におけるODSの危険因子
- 低カリウム血症
- 低栄養
- アルコール中毒
- 肝障害
- サイアザイド系利尿薬服用中の高齢女性
- 火傷
3%食塩水点滴投与による血清ナトリウム濃度の予測
- より正確な予測はAdrogue-Madiasの予測式から求めます。
血清ナトリウム濃度120mEq/Lに達する、または中枢神経症状が改善した後の治療
3%食塩水による点滴を中止し、水分制限による治療に変更します。
監修/有馬 寛. 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版. 日本内分泌学会雑誌;2023. P21-23.
有馬寛: 日内会誌 : 2014;103(4) : 849-854.
山口秀樹ほか : 日内会誌. 2016 ; 105(4): 667-675.
柴垣有吾 著. 深川雅史 監修. 体液電解質異常と輸液 改訂3版. 中外医学社;2019. P58-66.
塚本雄介 :専門医のための水電解質異常 診断と治療. 東京医学社 ; 2020. P63-64.
盛田幸司: 内科. 2019 ; 124(6) : 2445-2448.