診断について/SIADHの鑑別診断

体液(細胞外液)量の減少する低ナトリウム血症
中枢性塩類喪失症候群

中枢性塩類喪失症候群(cerebral salt wasting syndrome:CSWS)は、頭部外傷や脳外科手術に伴って低ナトリウム血症を呈する病態です。ナトリウム利尿ペプチド(ANP/BNP)の放出や、腎への遠心性交感神経刺激の障害に起因するレニンおよびアルドステロン濃度の低下が、腎臓でのナトリウム再吸収を阻害して低ナトリウム血症と体液(細胞外液)量の低下をきたすと考えられます。

SIADHは、抗利尿ホルモン(ADH)の不適切な分泌により水利尿不全をきたし、その結果二次的にナトリウム排泄が亢進して体液(細胞外液)がほぼ正常の低ナトリウム血症を呈します。一方、CSWSはナトリウム再吸収低下を一次的要因とする低ナトリウム血症であり、体液(細胞外液)量が低下し、ADHの分泌が亢進します。SIADHとCSWSでは、ともに低ナトリウム血症をきたし、低浸透圧血症、尿浸透圧高値、尿中ナトリウム濃度高値、血漿ADH濃度の抑制が認められないなど臨床像が類似しており、鑑別に苦慮することが少なくありません。

鑑別には体液(細胞外液)量の評価が重要になりますが、CSWSやRSWSなど体液(細胞外液)量の減少した低ナトリウム血症とSIADHの鑑別が困難な場合で、なおかつ血清ナトリウム濃度補正の緊急性が低いケースでは、生理食塩水負荷試験を行うことも有用です。

体液(細胞外液)量の低下した低ナトリウム血症では、脱水の改善とともに血清ナトリウム濃度が上昇します。SIADHの場合は、循環血液量の増加によりナトリウム利尿が生じ、血清ナトリウム濃度はかえって低下します。

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