SIADHとは/SIADHの原因

薬剤

低ナトリウム血症は、薬剤による電解質異常の中でも最も頻度が高いとされています。薬剤を原因とする低ナトリウム血症には、利尿薬による尿希釈能の低下や、その他薬剤によるバソプレシン(AVP)への影響などがあります。薬剤のAVPに対する影響としては、視床下部でのAVP分泌亢進、腎でのAVP作用増強、浸透圧受容体のAVP分泌閾値の低下(reset osmostat)などの機序が考えられています1)

抗うつ薬:アミトリプチリン、イミプラミン、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)など

特に高齢者において、抗うつ薬によるSIADHが発症しやすいとされています。高齢者では腎臓の尿濃縮能・希釈能が低下しており、ナトリウム保持能力が低下していることから、AVPの基礎分泌が亢進しています。また、浸透圧刺激に対して過剰に反応しやすいことからもSIADHをきたしやすいと考えられます2)

抗うつ薬によるSIADHの発症機序としては、AVP分泌亢進作用、腎集合管でのAVP作用増強、AVP分泌抑制経路の障害といった機序が考えられています。三環系抗うつ薬では抗コリン作用による口渇感刺激の中枢神経を介してのAVP分泌作用が関与している可能性も考えられていますが、詳細な機序は不明です2-4)

抗てんかん薬:カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウムなど

カルバマゼピンによるSIADHの発症機序は不明ですが、カルバマゼピンがAVP様作用を示す、またはAVP受容体の感受性を高める作用が可能性として考えられています5)

抗精神病薬:ハロペリドール、クロルプロマジン・プロメタジン配合剤、リスペリドンなど

作用機序は不明ですが、抗精神病薬はドパミン受容体に対して拮抗的に作用するため、中枢性のドパミン作動性経路を通じてAVP分泌を促す可能性について推察する報告があります6)

抗がん剤:シスプラチン、ビンクリスチンなど

癌治療における抗がん剤を含む薬物療法や手術、疼痛、嘔気などは、AVPの分泌を亢進するため、癌患者は低ナトリウム血症をきたしやすく、その要因としてSIADHも多くを占めています7)。シスプラチンは、腎のヘンレ係蹄からの電解質再吸収を障害するため、尿中ナトリウム排泄が増加してSIADHを発症しやすいと考えられていますが、不明な点も多くあります8)

プロトンポンプ阻害薬(PPI)

PPIによる薬剤性SIADHは、稀ではありますが報告されています9)。詳細な機序については不明です。

  1. 1)富永直人ほか 日腎会誌54(7): 991-998, 2012
  2. 2)大田秀隆ほか 日本老年医学会雑誌45(1): 90-94, 2008
  3. 3)クロミプラミン塩酸塩(アナフラニール®錠)インタビューフォーム
  4. 4)イミプラミン塩酸塩錠(トフラニール®錠)インタビューフォーム
  5. 5)カルバマゼピン(テグレトール®錠)インタビューフォーム
  6. 6)ハロペリドール錠「ヨシトミ」インタビューフォーム
  7. 7)松浦友一 日腎会誌54(7): 1016-1022, 2012
  8. 8)内田洋一郎ほか 日消外会誌37(9)1588-1593, 2004
  9. 9)鈴木聡ほか 日内会誌101(5): 1393-1396, 2012