炎症
肺炎、肺結核や肺アスペルギルス症などの感染症のほか、異所性のバソプレシン(AVP)産生を行わない肺の腫瘍や陽圧呼吸などがSIADHをきたすことがあります。肺炎や結核などの感染症では、炎症性サイトカインのインターロイキン(IL)-1β、IL-6などが増加し、視床下部や下垂体後葉のAVP産生細胞を直接刺激して、AVP産生や分泌を促進することが示唆されています1)。
感染症以外の肺疾患がSIADHをきたす要因としては、肺腔内圧の上昇による静脈還流量の低下などが挙げられます。左心房にあるAVPの容量受容体が静脈還流量低下を感知することで、AVPの分泌抑制が解除されて分泌が亢進すると考えられています。また、血中CO2濃度上昇による頸動脈洞化学受容器の刺激や、左心房あるいは大動脈弓に分布する迷走神経の途絶などの関与も示唆されています1)。
- 1)石川三衛 : Fluid Management Renaissance. 2013 ; 3(1). 46-51.
編集/医療情報科学研究所. 監修/森野勝太郎ほか. 病気がみえる vol.3 糖尿病・代謝・内分泌 第5版. メディックメディア; 2019. P232-235.