診断について/SIADHの鑑別診断

体液(細胞外液)量過剰な低ナトリウム血症
心不全、肝硬変の腹水貯留時、ネフローゼ症候群

心不全では、心拍出量の低下により有効循環血漿量が減少します。また、肝硬変では門脈圧や肝静脈圧の亢進により腹水や末梢浮腫が生じ、低アルブミン血症による膠質浸透圧の低下が有効循環血漿量を減少させます。そのため両者では、有効循環血漿量の減少により腎還流圧が低下することで、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系や交感神経系が賦活化され、腎臓でのナトリウムや水の再吸収が亢進して体液(細胞外液)量が増加します。ネフローゼ症候群でも肝硬変同様低アルブミン血症による膠質浸透圧の低下が起こりますが、ネフローゼ症候群では、糸球体障害により腎臓でのナトリウムの再吸収が一時的に亢進することで体液(細胞外液)量が増加すると考えられています。

いずれも腎臓でのナトリウム再吸収が亢進することで体液(細胞外液)量が増加しますが、相対的に血管内のナトリウムよりも水分量が多いため、体液(細胞外液)量が過剰な低ナトリウム血症をきたします。また、体内の水分量は増加しているものの、有効循環血漿量は減少しているため、RAA系の賦活化などにより腎臓でのナトリウム再吸収が亢進し、尿中ナトリウム排泄量は減少します。

SIADHでは体液(細胞外液)量が軽度増加しているため血漿レニン活性は低く、尿酸クリアランスが亢進して血清尿酸値は低値となります。一方、心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群に代表される浮腫性疾患では、血漿尿酸値が高値となるため鑑別の参考となります。また、浮腫性疾患による低ナトリウム血症は、他の検査所見や臨床症状などからも診断可能であり、鑑別は容易と思われます。

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