治療について/SIADHの治療

血清ナトリウム濃度>120mEq/Lあるいは中枢神経症状が認められない場合

SIADHの重症度は、血清ナトリウム濃度低下の程度やその持続時間、低ナトリウム血症による中枢神経症状によって判断されます。血清ナトリウム濃度が120mEq/Lを超えている場合や低ナトリウム血症による中枢神経症状が明らかではない場合は、水分制限による治療を行います。

さらに詳しく低ナトリウム血症の症状

水分制限・食塩投与

1日の総水分摂取量を体重kg当たり15〜20mLに制限します(およそ800mL/日以下)。食事に含まれる水分量は、皮膚や呼気からの不感蒸泄量とほぼ同等のため、水分制限の対象とはしません。ただし、厳格な水分制限は口渇の原因となり、患者のQOL低下につながる可能性もあるため、特に長期にわたる水分制限は実施が難しい側面もあります。

水分制限のみで血清ナトリウム濃度の上昇が十分でない場合、食塩を経口的に投与します[例:食塩9g/分3/日(成人の場合)]。水分制限や食塩投与で急速に血清ナトリウム濃度が上昇することがあるため、1日数回血清ナトリウム濃度を測定します。

水分制限を行っても低ナトリウム血症が改善しない場合

水分制限により脱水が進行する場合は、中枢性塩類喪失症候群(CSWS)や塩類喪失性腎症(RSWS)などの体液(細胞外液)量の減少した低ナトリウム血症が疑われます。
CSWSやRSWSが疑われる場合は、診断的治療としてナトリウムの大量投与を考慮します。

有馬寛:日内会誌. 2014 ; 103(4) : 849-854.
山口秀樹ほか:日内会誌. 2016 ; 105(4) : 667-675.

監修/有馬 寛. 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版. 日本内分泌学会雑誌;2023. P21-23.

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