診断について/SIADHの診断基準

尿浸透圧

「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」では、診断基準の検査所見の1つに「尿浸透圧は100mOsm/kgを上回る」を挙げています。

体内の水バランスは、口渇感による水の摂取と抗利尿ホルモン(ADH)による水の排泄量調整によって保たれています。SIADHではADHの不適切な分泌により、腎臓での水の再吸収が亢進して尿が濃縮され、尿浸透圧が上昇します。

糸球体で濾過された原尿の浸透圧は血漿浸透圧とほぼ等しく、その後ヘンレループ下行脚での水の再吸収により浸透圧が一旦上昇し、上行脚での溶質(ナトリウムやカリウム)の再吸収により、遠位尿細管での尿浸透圧は約50〜100mOsm/kgまで希釈されます。その後、集合管でのADHの作用がなければ尿は希釈されたまま、尿浸透圧約50〜100mOsm/kgの最終尿となります。一方、ADHの作用により集合管で水が再吸収されることで尿が濃縮され、尿浸透圧は上昇します。SIADHでは、低浸透圧血症に相応するADHの分泌抑制が認められないことから、尿浸透圧100mOsm/kg未満の最大希釈尿にはならないと考えられるため、診断基準の1つとして「尿浸透圧は100mOsm/kgを上回る」が示されています。

低ナトリウム血症が確認されれば尿浸透圧も同時に測定します。尿浸透圧の評価は畜尿が基本となります。測定結果が直ちに得られない場合は、次の推定式から簡易的に求められますが、正確な測定値で判断します。

尿浸透圧(mOsm/kg)=  2×[尿中ナトリウム濃度(mEq/L)+尿中カリウム濃度(mEq/L)]+BUN(mg/dL)/2.8

BUN(blood urea nitrogen:尿素窒素)

監修/有馬 寛. 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版. 日本内分泌学会雑誌;2023. P21-23.
柴垣有吾. 監修/深川雅史. 体液電解質異常と輸液 改訂3版. 中外医学社;2019. P42-46.
塚本雄介. 専門医のための水電解質異常 診断と治療. 東京医学社 ; 2020. P100.
山口秀樹ほか:日内会誌. 2016 ; 105(4): 667-675.

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