診断について/SIADHの鑑別診断

体液(細胞外液)量の減少する低ナトリウム血症
原発性副腎皮質機能低下症

原発性副腎皮質機能低下症では、副腎自体の病変により副腎から分泌されるコルチゾールやアルドステロンなどが欠乏します。原発性副腎皮質機能低下症の原因は多岐にわたり、先天性と後天性に分けられますが、後天性のものはAddison病と呼ばれます。

副腎皮質から分泌されるコルチゾールとアルドステロンは、腎臓でのナトリウム再吸収を促進し、さらにコルチゾールは下垂体後葉からの抗利尿ホルモン(ADH)の分泌を抑制しています。そのため、両ホルモンが欠乏する原発性副腎機能低下症では、腎臓でのナトリウム再吸収の低下とともにADHの分泌が亢進し、著しい低ナトリウム血症をきたします。また、食欲低下などによるナトリウムの摂取量低下も低ナトリウム血症の一因となります。ナトリウム不足により体液(細胞外液)量も低下するため、脱水や血圧低下を伴う低ナトリウム血症をきたします。

副腎皮質機能低下症を疑う臨床所見としては、低ナトリウム血症のほか、全身倦怠感、体重減少、低血圧、色素沈着、好酸球増多などがあり、副腎皮質機能を評価する際は早朝空腹時のコルチゾール値を測定します。コルチゾール値が4μg/dL未満であれば副腎皮質機能低下症が疑われます。

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